ブログトップ | ログイン

海の古書店

本のこと、心に浮かんだことを綴ります。香りのお店「Atmosfera」:http://atmosfera-kamakura.com/ お問い合わせ: books@good.memail.jp


by uminokosyoten

海の古書店『ユルスナールの靴』

海の古書店『ユルスナールの靴』_a0135581_07221699.jpeg




人生の折々に思い出す本。
須賀敦子さんの『ユルスナールの靴』。

「きっちりと足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いて行けるはずだ。
そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に会わなかった不幸をかこちながら、
私はこれまで生きてきたような気がする。
行きたいところ、行くべきところぜんぶにじぶんが行っていないのは、
あるいは行くのをあきらめたのは、すべて、
じぶんの足にぴったりな靴をもたなかったせいなのだ、と。」(プロローグ)


須賀敦子さんがごじぶんのことを綴り始められたのは60歳を過ぎてから。
それから旅立たれるまでの8年間、
たくさんの思いをまるで紙に刻み込ようにして文章に残されました。




60歳をとうに過ぎた私がいま思うのは、
じぶんの足に合った靴は一生探し続けるものなのかもしれないと言うことです。
でも、もしも、履いている靴が少しでも足に馴染んでくれれば、
そして、例えば、一緒に歩いてくれる優しい人たちがいてくれれば、
足に合わない靴でもどこまでも歩いて行けるかもしれませんし、
行くべきところへたどり着けるかもしれません。


だから、あなたのいま履いていらっしゃる靴、大切にしてあげてくださいね。








by uminokosyoten | 2019-04-18 07:35 | 本読み便り