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海の古書店

本のこと、心に浮かんだことを綴ります。香りのお店「Atmosfera」:http://atmosfera-kamakura.com/ お問い合わせ: books@good.memail.jp


by uminokosyoten

海辺の本棚『須賀敦子の本棚』

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20年の時の流れの中で、
皆が抱く須賀さんへの喪失感は、どんどん大きくなっているような気がします。
それは須賀敦子という存在に代わる人が出現していないから。


この本は須賀さんと交流のあった作家や評論家たちが
それぞれに関わった事象をあげながら
その稀有な人物像を追慕してゆく形で編まれています。
不思議なことに、読むほどに須賀敦子という人の謎が深まって。
関係者ですら知っているようで知らない須賀さんのこと。
それはご本人があえて語らなかったこと。
そして語らなかったことへのこだわりこそが
その人の原動力であったのではないかしらと。


翻訳家、書評家、そして教育者であり随筆家、詩人であった。
こう並べてしまうと、個々にあった営みであるように思えますが、
須賀さんの中ではきっと一続きの、
そしてご自分にとって必須のお仕事だったのだと思いました。



<教養人であることに間違いはないが、
それまでの膨大な読書を通して獲得した知識を武器のように振り回したりはせず、
生身のまま、自分を本の世界に軽々と投じることのできる人だった。
対象となる本の世界に入り込み、五感を働かせて隅々まで探り当てる。
本の最良の部分を取り出して、自分らしい表現で読者に差し出す。
書評はそんな風に書かれている。>
(P.84「書評家としての須賀敦子」佐久間文子)



須賀さんは猫に似ていると感じます。
勝気で賢くて、優しくて寂しがり屋。

今頃どこを旅しておいでなのでしょうね。
足にぴったりの靴はもう見つけられたのでしょうか?


『須賀敦子の本棚』→











by uminokosyoten | 2018-04-25 07:00 | 本読み便り