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海の古書店

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by uminokosyoten

読書『鎌倉のおばさん』村松友視

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『鎌倉のおばさん』

鎌倉文学館の展示で興味を持ち、図書館で貸していただきました。
村松友視さんの生い立ちの記といえるでしょうか。

村松さんがこんなにも鎌倉に縁の深い方だということを初めて知りました。
同時に文学界で活躍された一族の系譜の中にいらしたことも。

武田百合子さんに『富士日記』を書くように勧めた人。
私にとってはほんとうに小さな知識のかけらしかなくて。


「鎌倉のおばさん」とは村松さんの戸籍上の「父親」である「祖父」梢風の
内縁の妻であった絹江さんのこと。

村松梢風という作家の豪胆な人生を支え
自らも作家の妻を演じ抜いた絹江さんの半生を軸に、
一族の様々な事情を、他の作家たちの証言や作品を交えながら冷静に考察し綴った文章は
フィクションとノンフィクションの壁を越えてたいへん魅惑的でした。

絹江さんの死に関連して登場する覚園寺に始まり、
実在する場所、実存した人たちが多彩に描き出す梢風と絹江さんの人生。
その二人の個性に随分と影響された村松さんの個性。

編集者としても多くの功績を残してきた村松さんの「人を見る目」の確かさは
この環境で培われたにちがいないと勝手に納得したことでした。

昔の作家たちはロマンチストでエゴイスト。
痛快なほどの生き様です。


『鎌倉のおばさん』→










by uminokosyoten | 2017-03-24 07:01 | 本読み便り