「ルピナスさん」に想う
2016年 05月 27日
「ルピナスさん」より
つぎのとしの春は、いためたせなかがまたわるくなり、
ほとんどねてすごさなければなりませんでした。
まえのとしの夏にまいた花のたねが、いわのあいだからめをだして、
花をさかせました。
あおや、むらさきや、ピンクの花が、
ねているへやのまどからみえました。
「ルピナス、わたしのいちばんすきな花」
ミス・ランフィアスはうれしくなりました。
「らいねん、もっともっと花がふえるように、夏のあいだに、
またたくさんたねをまけるといいのだけれど」
けれども、それはゆめにおわりました。
きびしい冬がおわって、春がきました。
ミス・ランフィアスのぐあいもずっとよくなって、
さんぽができるようになりました。
ある日、ながいこといっていないおかのむこうがわまで、
あしをのばすことにしました。
「まさか、あれは!」
おかのうえにたどりついたミス・ランフィアスは、いきをのみました。
おかのはんたいがわに、あおや、むらさきや、ピンクのルピナスの花が、
さきみだれていたのです。
静かに待つことの大切さもわすれてはならないのですね。
by uminokosyoten
| 2016-05-27 07:02
| ことばのおと