週刊橙書店「黙祷の時間」
2013年 03月 31日
この本を読みながら、昔観た映画を思い出していました。
「思い出の夏」。
年上の人とのひと夏の恋。
やがてその人の夫の戦死が知らされて…。
美しい音楽とともに、一途な少年の想いが切なく胸に残る映画でした。
この本には高校生の少年の教師に対する憧れ、その教師のあふれるような輝きと二人の恋の行方が、海辺の町の風景のなかに香るように描かれています。
「あとがき」に、この作品は著者ジークフリート・レンツが81歳のときに発表され、そのみずみずしい感性が高く評価されたとありました。
少年のとまどいとよろこび、そしてそれゆえの深い悲しみが実に初々しい文章で綴られています。
若いころのひたむきな想いへの回帰。
それは今ある自分をみつめなおすきっかけになるかもしれませんね。
若い時の喪失の傷みは、ずっと人生を支配する。
そんな気がいたします。
「黙祷の時間」◆
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by uminokosyoten
| 2013-03-31 07:38
| 橙書店