週刊橙書店「祖母の手帖」
2013年 02月 10日
想像すること、書き記すこと。
これは人間に与えられた特権ですね。
想像して書き記されたものが小説。
小説の中にもうひとつ書き記されたもの、すなわち「祖母の手帖」が存在する。
さらに多くの人が語った過去の記憶が織り混ぜられて。
この小説では幾重にも人の人たる証が重なり合います。
時には使われる人称も変化して、読み手は迷路のような道程を辿って行くことになります。
そして迷路の果てに待っている答えに私は鳥肌立ちました。
愛を求める人。
その想いをたしかに受け止めることのできる人。
肉体から精神へ。
支えあう魂が産み出した特別な物語。
訳者あとがきによれば、この小説の著者ミレーナ・アグスの全作品の出版元であるノッテテンポ出版社は、二人の女性が2002年にローマで設立した小説と随筆を専門とする小さな出版社。
「夜寝る前にベッドでくつろいで読む良質な本をつくりたくて」生まれた会社だそうです。
ノッテテンポ(notte tempo)とはイタリア語で「夜の間に」を意味して、出版物にはソフトカバーの表紙、大きめの活字、丈夫な糸かがり綴り、広い余白など、ベッドで読みやすいためのさまざまな工夫がこらされているとのこと。
そういう本づくりの姿勢から生まれた「祖母の手帖」。
これは運命の出会いだと思います。
「祖母の手帖」◆
お問い合わせは橙書店まで。
by uminokosyoten
| 2013-02-10 07:40
| 橙書店