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海の古書店

本のこと、心に浮かんだことを綴ります。香りのお店「Atmosfera」:http://atmosfera-kamakura.com/ お問い合わせ: books@good.memail.jp


by uminokosyoten

東京点描「本読みの心得」

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昨夜は久しぶりに代官山へ。
先日フランスから帰国した息子とカフェミケランジェロで夕食を。
変わらぬ雰囲気がうれしいお店ですね。




上京の目的は仏文学者の野崎歓さんと堀江敏幸さんのお話を伺うことでした。
テーマは1980年代以降のフランス文学について。
お二人は前後してその時期フランスへ留学。
邦訳の少なかったフランス文学、
ほとんど日本で公開されなかったフランス映画を
心身で受け止め、
そのことが今のお仕事のベースになっていらっしゃるとのこと。
「好き」から「仕事」を生み出してこられたお二人の裏話に会場も引き込まれて。

どのお話も興味深かったのですが、
私がもっとも驚き感心したのは、
お二人が当時からやりとりされたファックスや
対談された雑誌のコピーなどをきちんと保管されていることでした。

30年も前のファックス!
コピー!
どう保管されているのかしら。

野崎さんはそれらを関連する書籍に挟んでいらっしゃるそうです。
その本に対する書評や記事はその本に。
堀江さんがびっくりの切り抜きも登場。
堀江さんの初版『おぱらばん』(1998年刊)に挟まれていたのは
仏文学者で小説家の松浦寿輝さんの書評。
めったに褒めない松浦さんが「新星」堀江さんをベタ褒めされた文章でした。
その予見は20年後の今、見事に的中していることも皆の驚きでした。


堀江さんは野崎さんと初めて行った対談のコピーを取り出されて。
今度は野崎さんがびっくり!
「覚えてるよ!」ととてもうれしそう。
そして「こんなことを話していたんだね」とその後のご自分の仕事とも照らし合わせて。
お二人とも最初に好きでいらしたこと(作家や作品)から離れずに研究を続けていらしたことにも
感銘を受けました。


本読みの心得。
きちんと記録、記憶、保管すること。
ことばをその場かぎりで流してしまわないこと。
それが「好き」を「仕事」にする秘訣だと思ったことでした。





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写真はお二人にいただいたサイン。
開催書店の意向で為書き(宛名書き)が義務付けられていましたので
私はViolraに。
こんなばあばのわがままにもおしゃれに応じてくださったお二人に、
パリの風を感じた夜でした。










by uminokosyoten | 2017-09-14 10:14 | 東京とその周辺のこと